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4. 慢性硬膜下血腫

一般に軽微な頭部外傷後、約3週間目以降、ほとんどは壮年から高齢者の方に起こる病気です。頭蓋内の硬膜の内側(硬膜とくも膜の間、硬膜下)に血液が徐々に貯留して発症します。我々脳神経外科医が最も日常的に遭遇する病気の一つと言えます。症状は頭痛、片麻痺、失語症等の他、特に高齢者の患者さんでは、呆け症状、意欲低下など、いわゆる認知症様症状のみが前景に立つこともあります。治療は基本的には局所麻酔下に行います。Burr hole surgery with closed drainage systemと呼ばれる手術を行います。一円玉くらいの大きさの穴を頭蓋骨に穿ち、血腫腔(血の溜まっている部分)にシリコン性の柔らかいチューブを挿入します。血腫は病室に帰ってから、ゆっくりと(通常は一晩)時間をかけて自然に抜けるようにします。手術時間は約30分で、術後3?4日目に退院していただくのが標準的な経過です。その後は外来に通院していただき、経過を観察致します。昨年度は22名の患者さんを手術し、再発は認められませんでした。再発が認められなかった一つの理由として、後述する「トラネキサム酸による再発予防」の効果が考えられます。
強調したいことは、壮年?高齢者の方で、比較的急速に認知症様症状が出現した場合、「この病気を疑って医療機関に相談していただきたい」ということです。手術により認知症様症状が直ることから、treatable dementia として認識されるべき病態なのです。

※topics?トラネキサム酸による慢性硬膜下血腫の内科的治療、および再発防止について
「トラネキサム酸」という、扁桃炎・咽喉頭炎などの症状を和らげるお薬があります。このお薬自体は昔から大変良く使われています。我々はこのお薬の持つ「抗線溶作用および抗炎症作用」に注目し、手術に至らない程度の血腫量で発見された患者さんに対し、血腫の消退や増大防止を目的としてこのお薬の投与を行い、良好な結果を得ております。
この成果は2012年4月アメリカ・マイアミで行われた権威ある国際学会、2012 AANS ANNUAL SCIENTIFIC MEETING で景山医師により発表されました(New Medical Therapy of Chronic Subdural Hematoma with Tranexiamic Acid Without Operations: Hiroshi Kageyama, MD., Terushige Toyooka, MD., Nobusuke Tsuzuki, MD., Kazunari Oka, MD., Kuki, Japan)。
これに引き続き2013年4月29日、同じく2013 AANS ANNUAL SCIENTIFIC MEETING にて、豊岡医師が術後症例におけるトラネキサム酸の有用性につき発表を行いました(Effectiveness of antifibrinolytic therapy after surgery for chronic subdural hematoma: Terushige Toyooka, MD., Hiroshi Kageyama, MD., Nobusuke Tsuzuki, MD., Kazunari Oka, MD. Kuki, Japan)。